<次世代メンテナンス②>CBMを実現する6つのステップ
2021.11.15
前回のコラム「<次世代メンテナンス>3つの保全方式」では設備・インフラにおける3つの保全方式を説明いたしました。今回のコラムでは、3つの保全方式の中で最も近代的といえる予知保全の主な手法であるCondition-based Maintenance (CBM、状態基準保全)について、もう少し詳しくご紹介します。
CBMとは
CBMとは、設備・インフラの部位・部品の状態をセンサーとシステムによって常時監視し、データ分析に基づいた故障・破壊予兆診断を用いる方法のことです。CBMによって、設備・インフラ事故の未然防止、製品品質の確保、生産効率の向上、生産・保全コストの削減など、多大なるメリットが享受できます。
CBMを実現する6つのステップ
CBMは一般的に以下の6つのステップによって成り立つと言われております。
- 経済合理性評価
- データ取得
- データ前処理
- 特徴抽出
- 閾値の設定
- システム運用
1.経済合理性評価
対象の部位/部品の選定とCBM導入による経済合理性の評価を行います。回避コスト(故障部品費、機会損失費、対策費など) + 節約コスト(エネルギー消費量、修理部品在庫、待機時間など) – 運用コスト(センサー費用、データ収集費用、管理費など)がプラスになるかを検証します。また、例えば工場設備の場合、「現在、設備Aの部品Bの故障モードCの突発故障が頻回起こっており、○○万円/年のコストが発生している。設備Aの部品Bの故障モードCの故障を○○時間前に○○%以上の確立で予測することで、ダウンタイムを○○%削減し○○万円/年コスト削減する」といった目標を予め定めることも重要です。
2.データ取得
対象の部位/部品における対象の故障モードの故障を検知するために必要な情報を見極め、適切なセンサーを選択・設置しデータを取得します。温度、電流、振動、圧力、流量、トルクなどの中から、どの情報を取得することが異常検知につながるか、適切な知識を持って適切な選択をすることが重要となります。また、対象の故障につながる情報を直接的に検知することが望ましいのですが、難しい場合には、間接的なデータを取得することも考えます。例えば、高温で稼働する設備には、耐熱性の低いセンサーの取付けは難しく、対象設備の近傍の別の部位にセンサーを取り付けることもあります。
3.データ前処理
取得したデータから、ノイズ、欠損値や外れ値を除去する処理を行います。前項のように間接的に取得したデータの場合は、ノイズ、欠損値、外れ値が多く、データの質が下がるために、前処理作業の難易度が高くなります。高品質なデータを取得することが、前処理にかかるコストを削減、最小化することに繋がります。
4.特徴抽出
記述統計学的なアプローチや、次元削減、周波数解析等を用いて、特徴を抽出します。
5.閾値の設定
正常データの集合から、どれくらいズレた場合に異常と見做すかの閾値設定を行うことで、異常検知を可能とします。間接的なデータを取得した場合には、例えば「部位Aの異常が、設備Bの故障モードCに繋がる」などの因果関係を理解した上で閾値を設定する必要があります。
6.システム運用
閾値を超えた場合にどのような挙動をとるのか、また、精度評価の方法など、運用方法を定めます。
CBM導入のハードル:バラつき(不確定性)
上述の6つのステップに共通して、ハードルとなるのがバラつき(不確定性)です。ここでいう不確定性には、対象物そのものの不確定性とセンサーの不確定性の2種類あります。対象物の不確定性は、製造における形状や物性、使用条件、使用環境などが要因となります。センサーの不確定性は、センサー自体の性能、設置位置、ノイズなどが要因となります。不確定性によって、同種の工場設備であっても、設定される閾値は異なり、また、間接的なデータを取得している場合には、因果関係が異なる可能性もあります。CBMの運用設計にはこれらの不確定性を考慮する必要があり、これらの不確定性を可能な限り低減することがCBM導入の成否に繋がります。
smartNejiのご紹介
NejiMOが提供するsmartNejiはCBMの適用を推進する技術です。smartNejiは物体にかかる応力を直接検知することが可能です。緩まないネジに立脚した高度なセンシング技術は、締結箇所のみならず、物体全体の状態を監視することを可能とします。smartNejiはその他のセンサー技術とは異なり、CBM導入のハードルとなる不確定性の多くを除去し、より高品質なデータを取得することを可能とする技術であり、「次世代メンテナンス」の実現に寄与します。
smartNejiについては、特設HPで詳しく説明しておりますのでリンク先をぜひご覧ください。