コラム

<橋梁>橋梁の老朽化と今後の展望

2021.08.27

日本における橋梁の老朽化問題の現状

国土交通省が発表した「老朽化対策の本格実施について」によると、現在、日本にある橋梁の老朽化が急速に進んでおり、10年後には架設後50年を超える橋梁が全体の4割以上を構成するというデータがでています。人間社会でも高齢化は社会問題となっていますが、橋梁も同じく高齢化が進んでいるのです。

国が管理している橋梁は日本全国に約73万カ所あり、2033年までに46万カ所の橋梁が築年数50年を超えることや、他の約23万カ所の橋梁に至っては、架設された時期もわかっていないことからも、老朽化問題の深刻さがうかがえます。

 

橋梁の老朽化が進む原因

現在日本にある多くの橋梁は、高度経済成長期に架設されました。当時の日本では「コンクリートは永久構造物」などと言われており、塩害によるコンクリート中の鋼材が腐食し、鋼材の体積膨張でコンクリートにひび割れや剥離を引き起こすことはあまり知られていませんでした。

建設物が老朽化した場合の修繕費用や、設備維持費用、少子高齢化による労働人口減少問題についてもほとんど議論されず、現代になって様々な問題が顕在化したことで、ようやく社会問題として認識されました。橋梁の老朽化が進んだ原因は、過去の建設物に対する考え方と、少子高齢化にあるといえます。

 

1.国の予算と労働力の不足

高度経済成長期の日本では、交通インフラへの投資が多く行われていました。しかし、現在は少子高齢化により労働人口が減ったことや、社会保障費の増加により、交通インフラに費用をかけられない現状です。また、人口が減っても必要な交通インフラの数には大きな変化がないことも問題とされています。

地方では、使用頻度の低い橋梁には予算が回ってこないことが原因で、修繕や更新が出来ず、使用できなくなったまま放置されている橋梁もあります。国や地方自治体が、隣接する自治体と協力し合い維持管理をするほか、民間企業に管理運営を委託するなど様々な対応策を講じていますが、依然として問題解決には至っていません。

 

2.ずさんな管理体制

冒頭で、日本全国約23万カ所に、建設された時期のわからない橋梁があると紹介しました。この背景には、戦後、人口が増加する中で生活環境をよりよくするために法整備をせずに交通インフラが乱立されたことに原因があります。当時は、図面や橋梁のデータを保存する義務や、橋梁を定期点検する法律もありませんでした。その後、2012年12月に起きた笹子トンネル天井板落下事故の影響もあって、社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会において、「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」がとりまとめられます。これにより、維持管理の重要性が指摘されて、トンネルや橋梁の定期検査が義務付けられたのは2014年7月のことです。

 

今後の展望

異常気象の影響から、豪雨や豪雪が局所的に生じていることや、日本では地震を含めた自然災害が多いことから、災害に強い持続可能なレジリエンスのある橋梁づくりを目指していく必要があります。レジリエンスのある橋梁とは、災害から回復する力や、防災力のある橋梁を意味します。

レジリエンスのある橋梁づくりを実現するためには、あらゆる災害を予測して、各地域に応じた形式の橋梁を架設し、リモートでの維持管理を実現することが必要です。

 

 

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